la-musicaの美の採掘坑

自然、美術、音楽、訪れた場所などについて、「スゴイ!」「きれいだな...」「いいね」と感じたものごとを書き留めています。皆さんの心に留まる記事がひとつでもあればうれしいです。

絵の採掘坑(Art)

大唐西域壁画 (絵の採掘坑 30)

京都・龍谷ミュージアムの「三蔵法師玄奘」展を訪ねた翌日、朝一番で奈良・西ノ京にある薬師寺を訪れました。 夏休み期間中、玄奘三蔵院伽藍は8月13日~15日の三日間のみ公開とのことで、どの程度の人出になるのか想像がつかなかったので、開門の8時半に間に…

クリムトの風景画 (絵の採掘坑 29)

仕事でウィーンを訪問し週末を過ごす機会を得ました。 この機会に久しぶりにクリムトの絵を観ることにして、ベルヴェデーレ宮殿オーストリア・ギャラリーとレオポルト・ギャラリーに足を運びました。 振り返ってみると、初めてクリムトの絵に触れたのは高校…

金山康喜 「静物」 (絵の採掘坑 28)

先日、葉山の一色海岸に行ったこと、第一の目的は神奈川県立近代美術館の葉山館の展覧会であったことに触れました。 朝日新聞夕刊の"美の履歴書"で紹介された「食前の祈り」と題された絵を見て実物を見てみたくなり、展覧会『金山康喜のパリ―1950年代の日本…

風景画家 ヨアヒム・パティニール (絵の採掘坑 27)

石川美子氏の『青のパティニール 最初の風景画家』を読了しました。 ”風景画家”パティニールについては十年以上前ドイツに滞在した頃から興味を持っていたものの、これまでパティニールに焦点を当てた著作を目にしたことはありませんでした。 そのため、パテ…

フィリッポ・リッピ~聖母子像 (絵の採掘坑 26)

自分をイタリア・ルネサンス絵画へ誘ってくれたのは、学生時代の初めてのイタリア旅行で、フィレンツェのウフィツィ美術館で観たフィリッポ・リッピの「聖母子と二天使」でした。 ウフィツィで初めて観た数多くの宗教画の中で、フィリッポ・リッピが描くマド…

クリヴェッリ~二つの受胎告知 (絵の採掘坑 25)

イタリアには何度か旅行していますが、イタリア20州の中でまだ訪れたことがない州が数多く残っています。 マルケ州もその一つです。 ウルビーノはラファエロの生まれた世界遺産の街。 そして、アスコリ・ピチェーノはクリヴェッリが活躍し家庭を築いていただ…

コレッジョ~聖母子像・神話画 (絵の採掘坑 24)

コレッジョは、パルマ大聖堂の円天井画に携わった時期(1526年~30年)に、並行して油彩画の傑作も生みだしました。 パルマ国立美術館ではコレッジョの油彩画も色々鑑賞することができます。 パルマのサンタントニオ聖堂の礼拝堂の祭壇画として描かれた『聖母…

コレッジョ~フレスコ天井画 (絵の採掘坑 23)

ドイツ駐在中に北方ルネサンスにのめり込む以前は、イタリア・ルネサンス絵画が好きで度々イタリアに旅行していました。 この時代の画家の場合、画家が活躍した都市の聖堂に代表作が残されていることが多く、目的の画家の代表作を見るために、フィレンツェ、…

リヒテンシュタインのヴィーナスとキューピッド (絵の採掘坑 22)

2003年の夏、美術館巡りを目的に妻とスイスを旅行した際、リヒテンシュタインの美術館(ファドゥーツ・コレクション)を訪ねました。 その日は朝、ボーデン湖の畔にあるドイツの町、コンスタンツを出発。 ボーデン湖はドイツとスイスとオーストリアの国境の…

イーゼンハイムの祭壇画 (絵の採掘坑 21)

海外出張中の自由時間に美術館を見て回るようになった頃、『私の好きな世界の美術館・ベスト3』(リテレール・ブックス)という本を購入して読みました。 評論家、学者、作家、芸術家など48名の著名人が各々自分の好きな美術館やその美術館の収蔵品について…

神秘の子羊 (絵の採掘坑 20)

ドイツ滞在中に妻と美術館や聖堂を巡ってたくさんの祭壇画を見ました。 その中では、ファン・アイク兄弟の「神秘の子羊の祭壇画」とグリューネヴァルトの「イーゼンハイムの祭壇画」が我々にとっては双璧です。 「神秘の子羊の祭壇画」が明/光とすれば「イ…

ライプチヒのマットホイアー (絵の採掘坑 19)

2000年の6月、ドイツ・ライプチヒの造形美術館を訪れました。 この美術館は、中世から20世紀までのドイツ絵画を中心に展示していて、「アダムとエヴァ」をはじめとするクラナッハの作品やフリードリヒの「人生の諸段階」などが鑑賞できます。 又、ファン・デ…

フリオ・ロメロ・デ・トーレス (絵の採掘坑 18)

もうかなり前のこと、学生時代にスペインを旅しました。 まずバルセロナに入り、マドリッド、トレド、アランフェスと回った後、アンダルシア地方のグラナダへ。 その後アルヘシラスからジブラルタル海峡を隔てたアフリカ大陸のスペイン領セウタに渡りました…

ロラン「プシュケとクピドの宮殿のある風景」 (絵の採掘坑 17)

ドイツ滞在中、長めの週末を妻とロンドンで美術館三昧をして過ごしたことがありました。 2泊3日の滞在でしたが、ナショナル・ギャラリーには3日通いつめました。 ナショナル・ギャラリーには13世紀末から1900年までのあらゆる画派の絵画が収蔵されています。…

苺のある静物 (絵の採掘坑 16)

先日小布施の北斎館で、魚や果物や花などが瑞々しく活き活きと描かれているのを見て、北斎の肉筆の静物画の素晴らしさを再認識しました。 これまでヨーロッパを中心に美術館で数多くの静物画を見てきましたが、最も印象に残っている静物画は、ハーグのマウリ…

晩鐘~わが心のフライブルク (絵の採掘坑 15)

フライブルクは、バーデン・ヴュルテンベルク州の南西部、シュヴァルツヴァルト山地の麓に位置するドイツの都市です。 大学都市であり、また環境保護で先進的な取り組みをしている"グリーンシティ"でもあります。 小路の横の溝に清流が勢いよく流れる旧市街…

小布施の鳳凰 (絵の採掘坑 14)

「葛飾北斎」というと、"冨嶽三十六景"=浮世絵・風景画のイメージしかもっていませんでしたが、2005年秋に東京国立博物館で開催された「北斎展」で晩年の肉筆画を見て、イメージが大きく変わりました。 飽くなき探究心で九十歳まで描き続けた北斎。 画号を…

シュトゥットガルトのペルセウス (絵の採掘坑13)

シュトゥットガルト州立美術館には、ラファエル前派の画家エドワード・バーン=ジョーンズが描いた、ギリシャ神話のペルセウスを主題とした連作があります。 油彩6点と、紙にチョークと不透明絵の具で描いた作品2点の合計8点が収蔵されています。 のちに…

迷路と百水 (絵の採掘坑 12)

小学一年生の息子が迷路に夢中です。 迷路を解くだけではなく書くことも大好きで、学校の休み時間に自由帳に迷路を書いては友達や先生に「やってみて」と声をかけている様子。たくさん書いています。 家でも白板や紙に迷路を書いていますが、あっという間に…

シュテファン・ロッホナー (絵の採掘坑 11)

ドイツ・ケルンのヴァルラフ=リヒャルツ美術館に「薔薇の園亭の聖母子」という小品があります。 亭の中に、清楚で優しい表情の聖母マリアがきりっとした表情の幼子イエスを膝に乗せて座っています。その周りをかわいらしい顔の天使たちが取り囲んでいます。…

エジプトへの逃避 (絵の採掘坑 10)

ヨーロッパの美術館や教会を訪ねて絵を観て歩いた際に常々感じていたのは、「聖書や神話について少しの知識があるだけで絵を観る楽しみが何倍にもなる」ということでした。 本や絵の解説などを読んでも最初のうちはすぐに忘れてしまうのですが、興味を持って…

ティトゥス (絵の採掘坑 9)

レンブラント・ファン・レインは「光と影の画家」と呼ばれた17世紀オランダ絵画の巨匠です。 「光と影」という呼称はレンブラントの明暗表現によるものですが、彼の生涯自身も「栄光の前半生」と「困難と失意の後半生」で光と影に包まれていたと言えるのでは…

ヘールトヘン・トット・シント・ヤンス -2 (絵の採掘坑 8)

ヘールトヘン・トット・シント・ヤンスの数少ない作品は、彼の活躍の地であったオランダ、オーストリア、ドイツ、イギリス、フランス、スイス他、欧州各地に散らばっています。 ここで「ヘールトヘン・トット・シント・ヤンスを巡る」鑑賞ツアーをシミュレー…

ヘールトヘン・トット・シント・ヤンス -1 (絵の採掘坑 7)

ドイツに約二年半滞在していた頃、妻と美術館巡りをして、ドイツやネーデルランドの画家の絵を数多く見ました。 そのころに初めて知った画家にヘールトヘン・トット・シント・ヤンスがいます。 我々お気に入りのこの画家について紹介しましょう。 ヘールトヘ…

オスカー・ラインハルト・コレクション ~ クラナッハ 「ヨハネス・クスピニアン博士とその妻アンナの肖像」 (絵の採掘坑 6)

日本にもたくさんの美術館があるものの、残念ながら、北方ルネサンス絵画を所蔵する美術館はほとんどありません。 上野の国立西洋美術館には、ルーカス・クラナッハ(父)の「ゲッセマネの祈り」があり、他にフランドル絵画もあったかと思いますが、他の美術…

北方ルネサンスの魅力 ~ 上部ライン地方の画家 「楽園の小さな庭」 (絵の採掘坑 5)

イタリア旅行の最大の楽しみ(食を除く...)はルネサンス美術に浸ることにありますが、同様にドイツ・ベネルクスを旅する魅力のひとつ(僕にとっては一番の魅力)に北方ルネサンス美術があります。 一般的に「北方ルネサンス」とは、15世紀から16世紀にかけ…

カンディンスキー「即興:洪水」における色彩の洪水について (絵の採掘坑 4)

ドイツ/ミュンヘンにある市立レンバッハハウス美術館は、芸術家グループ「青騎士」の作品群の他に類をみないコレクションで名高い。 ここでは、「青騎士」のメンバーであったガブリエレ・ミュンターの寄贈による作品によって、「青騎士」時代のカンディンス…

フリードリヒの「ドレスデン近郊の大猟区」 (絵の採掘坑 3)

ドイツ・ロマン主義の風景画家フリードリヒの作品に「ドレスデン近郊の大猟区」があります。 太陽の姿が微かに認められる茜色の空。夕暮れの光が空から遠のき、河の流れる湿地帯は闇の中に落ちていきます。 観る者の視線は地平線へと引き込まれ、日没直前の…

ユーゲン王子の「古城」 (絵の採掘坑2)

この絵は、スウェーデン王室のユーゲン王子(Prins Eugen)が描いた「古城」という作品です。 正方形のキャンバスに大きく描かれているのは、緑の丘に建つレンガ屋根の建物、抜けるような青空、そしてその間に広がる雲。 この絵の主題は雲であり、青空に放射…

ヴァルトミュラーの「窓辺の若い農婦と三人の子供達」 (絵の採掘坑 1)

今日は好きな絵について。 窓辺で父親の帰りを待っていたのでしょう。こちらへ向かってくる父親を見つけ、幼い子供が母親を見上げて話しかけています。 母親は既に夫の姿に気づいていて、正面を見つめて優しく微笑んでいる。反対側の窓辺には、お兄ちゃんが…