迷路と百水 (絵の採掘坑 12)
小学一年生の息子が迷路に夢中です。
迷路を解くだけではなく書くことも大好きで、学校の休み時間に自由帳に迷路を書いては友達や先生に「やってみて」と声をかけている様子。たくさん書いています。
家でも白板や紙に迷路を書いていますが、あっという間にできあがってしまい、大したものだと感心しています。
そういう年頃・時期なのでしょうか。
息子の書く迷路を「色を付けたらもっと面白くなりそうだなあ」と思いながら見ていて、急にフンデルトヴァッサーを思い出しました。
フンデルトヴァッサーはオーストリアの画家で建築家です。
彼の絵画・版画作品は、眩暈を起こさせるような渦巻や流線とサイケデリックな色彩が特徴で、幻惑的で強烈な印象を受けます。
彼の建築作品は、廊下や壁が緩やかに波打ち、屋根やベランダに草木が植えられ、自然と人間の共存という哲学が込められています。
20年以上前になりますが、1989年の5~7月に目黒の東京都庭園美術館でフンデルトヴァッサー展が開催され、フンデルトヴァッサー氏も来日しました。
その際に日本の彫刻家・建築家とのパネルディスカッションが企画され、そこで彼の話を聞く機会を得ました。
生態学(エコロジー)や建築の話題が中心で、腐植式くみ取り便所や植物による水の浄化に長く取り組んでいると話していました。今振り返ると、エコの取り組みにおいてかなり先を走っていた人ではないかと思います。
ともかく、フンデルトヴァッサーの作品をまとめて見たのはその時が初めて。作品のモチーフも色使いもこれまで見たことがないものだったので、強烈なインパクトを受けました。
(展覧会のカタログの表紙)
走っている車のフロントガラス越しに見える景色。消失点から放射状に広がる細かい線がスピードを感じさせます。
渦巻模様や細かい流線に埋め尽くされた人の顔。玉ねぎ屋根の建物。
迷路をみているいるような「壁」というタペストリーの作品もありました。
(展覧会のカタログから)
彼の作品の多くに原色の赤が使われていて、赤のほかに黄、緑、青、紫などの原色がまじりあわずに並べて置かれて強く発色しています。
展示は、彼の初期から80年代の作品まで、ジャンルも絵画、版画、タペストリー、建築模型と幅広い構成で、フンデルトヴァッサーの芸術の全容を一望するのには非常によい展覧会でした。
子供の迷路の絵からフンデルトヴァッサー"百水"の話に展開してしまいましたが、ちょっと飛躍しすぎだったでしょうか??