la-musicaの美の採掘坑

自然、美術、音楽、訪れた場所などについて、「スゴイ!」「きれいだな...」「いいね」と感じたものごとを書き留めています。皆さんの心に留まる記事がひとつでもあればうれしいです。

コレッジョ~フレスコ天井画 (絵の採掘坑 23)

ドイツ駐在中に北方ルネサンスにのめり込む以前は、イタリア・ルネサンス絵画が好きで度々イタリアに旅行していました。

この時代の画家の場合、画家が活躍した都市の聖堂に代表作が残されていることが多く、目的の画家の代表作を見るために、フィレンツェ、ローマ、ヴェネツィア、ミラノを始め、イタリア各地の都市を回りました。

アントニオ・アッレグリ、通称コレッジョは1520年代に北イタリアのパルマで活躍した画家です。

モデナ近くのコレッジョで生まれ同地で没したので、この通称で呼ばれています。

コレッジョは、パルマのサン・パオロ女子修道院のフレスコの円天井画で評判を高め、続いてサン・ジョヴァンニ・エヴァンジェリスタ聖堂の一連の壁画装飾に携わり名声を不動のものにしました。

その後、油彩の祭壇画の傑作を次々に生み出すと同時に、畢生の大作であるパルマ大聖堂の円天井画の制作に取り組みました。

以前ミラノを起点に北イタリアを旅した際、コレッジョが修道院・聖堂に描いた壁画を見るためにパルマを訪れました。

サン・パオロ女子修道院のコレッジョの出世作は、院長の正方形の居間の天井に描かれたフレスコ画で、竹竿で16の区画に区切られた蔓棚が描かれています。

各区画には、まず果実の房があり、その下の楕円形の天窓の中に二人のプットが姿を見せ、更に下の半円区画には神話的・寓話的な主題がモノクロームで描かれています。

コレッジョ サン・パオロ女子修道院の円天井画

無邪気な様子に描かれたプット達と緑の背景に温かみを感じました。

サン・ジョヴァンニ・エヴァンジェリスタ聖堂の丸天井には、『福音書記者聖ヨハネの幻視』が描かれています。

雲の上に座る11人の使徒に囲まれて、黄金色に輝く天に向かってキリストが飛翔しています。

コレッジョ パトモス島の福音書記者聖ヨハネの幻視

使徒達は皆ヘラクレス的な肉体を持ち、キリストも力強く逞しく描かれていて、ミケランジェロが描く男性像を思い起こさせます。

下から見上げるキリストは、宙に軽やかに舞っているように感じられました。

そして、第三のフレスコ天井画がパルマ大聖堂の『聖母被昇天』です。

サン・ジョヴァンニ・エヴァンジェリスタ聖堂の天井画から別次元にスケールアップしています。

空間も奥行きも広がり、人物の構図も複雑になり、動きもよりダイナミックになっています。

天井は同心円状の複数の層からなり、中心に向かうにつれて人物のスケールも縮小していきます。

コレッジョ 聖母被昇天

天井の中央下には、様々な楽器を手にした天使達に囲まれながら、手を広げて昇天していく聖母マリアが描かれています。

天使達は様々な動きのあるポーズをとっています。

聖母マリアの上の層には無数の天国の人々がぎっしりと並び、中央の光り輝くところに、聖母を迎えるためにキリストが舞い降りてきます。

平面ではなく曲面にこれだけの絵を描くのは驚異的です。

ミケランジェロの『システィーナ礼拝堂天井画&最後の審判』と同様、やはりその場に立って見上げて圧倒されるしかないでしょう。