la-musicaの美の採掘坑

自然、美術、音楽、訪れた場所などについて、「スゴイ!」「きれいだな...」「いいね」と感じたものごとを書き留めています。皆さんの心に留まる記事がひとつでもあればうれしいです。

Angel Eyes (歌の採掘坑 3)

ニコラス・ケイジが1995年度のアカデミー賞ゴールデン・グローブ賞の最優秀主演男優賞を獲得した「リービング・ラスベガス」という映画がありました。

ラスベガスを舞台にニコラス・ケイジ扮するアルコール依存症の男ベンとエリザベス・シュー演じる娼婦サラとの、激しくも切ないラブ・ストーリーです。

導入のベンとサラとの会話の後、一瞬の間をおいてスティングがアカペラで歌い始め、透明感のあるピアノの伴奏がそっと入ってきます。

Leaving Las Vegas

Have you ever had the feeling

That the world's gone and left you behind

Have you ever had the feeling

That you're that close to losing you mind

You look around each corner

Hoping that she's there

You try to play it cool perhaps

Pretend that you don't care

But it doesn't do a bit of good

You've got to seek 'till you find

Or you'll never unwind

このヴァ―ス(歌の導入の前奏部分)に続いて、『Angel Eyes』のコーラス(歌の主題部分)が続きます。

弾き語りの名手マット・デニスが作曲した名曲『Angel Eyes』は、映画「リービング・ラスベガス」を観る前にも聴いたことはあったのですが、何となくとっつきにくく取り組んではいませんでした。

しかしながら、「リービング・ラスベガス」で、映画の雰囲気に完璧にマッチしたスティングの『Angel Eyes』を聴いて以来、この曲にのめり込んでしまい、色々な歌手のヴァージョンを聴きました。

マット・デニスが作曲した『Angel Eyes』にはヴァ―スはなく、上記のヴァ―スの部分はスティングの作詞・作曲なのではないかと思います。ジャズ・スタンダードの楽譜にもこの部分はありません。

でも、このヴァ―スの部分がないと映画が始まらないと感じさせるほど映画のサウンド・トラック化していました。

メロディーが気に入り自分で採譜しました。

≪Angel Eyes≫

Words by Earl Brent

Music by Matt Dennis

Try to think that love's not around

Still it's uncomfortably near

My old heart ain't gainin' no ground

Because my angel eyes ain't here

Angel eyes that old devil sent

They glow unbearably bright

Need I say that my love's misspent

Misspent with angel eyes tonight

So, drink up, all you people

Order anything you see

Have fun, you happy people

The drink and the laugh's on me

Pardon me, but I've gotta run

The fact's uncommonly clear

Gotta find who's now "number one"

And why my angel eyes ain't here

Excuse me while I disappear

作詞アール・ブレント、作曲マット・デニスの『Angel Eyes』は1953年の作品で、サスペンス映画「ジェニファー」に使われたのですが、映画自体はヒットせず、この曲だけが作曲者のマット・デニスを始め多くの歌手によって歌われ有名になりました。

"Angel Eyes=天使の瞳"とは愛する女性のことです。

この曲は、愛する女性にふられた男がそのやるせない気持ちを酒場で酒を飲んで晴らし、まわりの人々に自分のおごりだから自分を肴に飲んでくれ、という自暴自棄な歌です。

自分にとってのお手本はフランク・シナトラと作曲者マット・デニスのヴァージョンです。

スティングの歌も大好きなのですが、彼の歌は自分にとってはキーが高いので、色々聴いた中で自分が歌う際のお手本としてはフランク・シナトラとマット・デニスのヴァージョンが甲乙つけがたいです。

Only the lonely

シナトラのバラード・アルバムはいずれも好きなのですが、その中でも「Only The Lonely」は特別です。

このアルバムの二曲目が『Angel Eyes』です。

シナトラの『Angel Eyes』は、ふられ男の彼の芝居を目の前に見ているように、ドラマチックに聴かせてくれます。

"Excuse me while I disappear (すまないけど自分は失礼するよ)"と歌うエンディングはふられ男の悲哀の余韻を残します。

このアルバムには「One For My Baby」というバーテン相手の酒飲みの曲のほか、「Only The Lonely」「Guess I'll Hang My Tears Out to Dry」など、いつかはこのように味わい深く歌えるようになりたいと思わせる曲ばかり入っています。

Matt Dennis Plays and Sings

作曲者のマット・デニスは、53年の映画「ジェニファー」に特別出演して歌ったそうです。

彼が同年、ハリウッドのクラブ"タリー・ホー"でライブ録音したアルバムが「Matt Dennis Plays And Sings」です。

小さなクラブでのピアノの弾き語りで、シナトラのように歌い上げる感じではなく、ソフィスティケイトな感じでソフトに淡々と歌っています。

ワン・コーラス歌った後、サビに戻ってサビの部分をルバートで歌い、その後イン・テンポに戻してエンディング、最後の"Excuse me while I disappear"もソフトに歌い、粋な演奏です。

『Angel Eyes』」の後の、「Violets For Your Furs」も洒落た演奏で、歌の情景が目の前に浮かびます。

『Angel Eyes』は、歌う際にすぐに曲の世界に入り込むことができる、My Favorite Songsの中の一曲です。