la-musicaの美の採掘坑

自然、美術、音楽、訪れた場所などについて、「スゴイ!」「きれいだな...」「いいね」と感じたものごとを書き留めています。皆さんの心に留まる記事がひとつでもあればうれしいです。

Just One Of Those Things (歌の採掘坑13)

コール・ポーターの曲に熱中した時期がありました。

コール・ポーターの曲は、メロディーはエキゾチシズムに溢れていてコード進行がユニークですし、歌詞も個性的でおもしろい表現も多くて、とにかく”粋”という表現がぴったりという気がします。

コール・ポーターが1935年のミュージカル"ジュビリー"のために書いた曲が『Just One Of Those Things』です。

<< Just One Of Those Things >>

Words and Music By Cole Porter

(Verse)

As dorothy parker once said

To her boyfriend, "fare thee well"

As columbus announced

When he knew he was bounced,

"it was swell, isabel, swell"

As abelard said to eloise,

"don't forget to drop a line to me, please"

As juliet cried, in her romeo's ear,

"romeo, why not face the fact, my dear"

(Chorus)

It was just one of those things

Just one of those crazy flings

One of those bells that now and then rings

Just one of those things

It was just one of those nights

Just one of those fabulous flights

A trip to the moon on gossamer wings

Just one of those things

If we'd thought a bit, of the end of it

When we started painting the town

We'd have been aware that our love affair

Was too hot, not to cool down

So good-bye, dear, and amen

Here's hoping we meet now and then

It was great fun

But it was just one of those things

If we'd thought a bit, of the end of it

When we started painting the town

We'd have been aware that our love affair

Was too hot, not to cool down

So good-bye, dear, and amen

Here's hoping we meet now and then

It was great fun

But it was just one of those things

Just one of those things

恋人との別れに際して、”こんなことはよくあることのひとつさ (Just one of those things) ”と強がろうとする主人公の気持ちを描いています。

ヴァ―スでは、ドロシー・パーカー(米国の詩人)、コロンブス、アベラールとエロイーズ、ロミオとジュリエットの別れの時もしくは拒絶にあった時の言葉が並べられています。

コーラスでは、燃え上がった恋を振り返り、”あの時に少しでもこの終わりのことを考えていたらね、僕らの恋はあまりにも熱すぎて冷めないわけにはいかないってことに”と歌います。

そして、また会いたいという本音をちらっと覗かせながら、”それじゃ。また時々会えるかもしれないけど。楽しかったよ。でもこれはよくあることのひとつさ”と、少しひねくれて強がったセリフでエンディングとなります。

この曲を初めて聞いたのはフランク・シナトラの「Swing Easy」です。

Frank Sinatra Swing Easy Songs for Young Lovers

とにかく粋でクール。

緩やかな曲のリズムに乗って全く力みのない余裕の歌いぶりで、聴いていると自然と身体が左右に揺れてリズムをとってしまいます。

自分にとってこの曲はシナトラの歌と一体不可分になってしまっていて、「Swing Easy」は極めつけの決定盤です。

というわけで、男性歌手のヴァージョンではシナトラ以外には思い浮かびません。

一方、女性歌手ではお気に入りが幾つかあります。

コール・ポーターに興味を持って二枚あるエラ・フィッツジェラルドの「The Cole Porter Songbook」を手に入れて聴きました。

『Just One Of Those Things』は一枚目(Vol.1)の方に収録されています。

Ella Fitzgerald The Cole Porter Songbook

エラはヴァ―スから歌っていて、コーラスはミディアムのテンポで歌っています。

シナトラのヴァージョンはコーラスのみなので、この曲のヴァ―スのイメージは、ルバートで歌うエラのヴァージョンが定着しています。

エラの「The Cole Porter Songbook」には、ほかにも「Ev'ry Time We Say Goodbye」, 「What Is This Thing Called Love」など、その曲の決定盤といえるような演奏がたくさん入っています。

ディー・ディー・ブリッジウォーターの「Keeping Tradition」のヴァージョンはテンポがとても速いです。

Dee Dee Bridgewater Keeping Tradition

ディー・ディーは1stコーラスを歌詞で、2ndコーラス前半をスキャットで疾走するように歌い、間にピアノとドラムのソロを挟んで、2ndコーラスの後半に戻り駆け抜けるように歌い切ります。

3分弱の演奏です。

最後は、綾戸智絵の『Just One Of Those Things』です。

彼女が1998年にリリースしたファースト・アルバム「For All We Know」に収録されているものです。

Chie Ayado For All We Know

彼女のアルバムでは最初の「For All We Know」が気に入っていて、その中でも『Just One Of Those Things』がNo.1です。

ピアノ・イントロから続く"It was just"の導入から綾戸智絵の歌とトリオの演奏に引き込まれます。

彼女は1stコーラスに続けて、2ndコーラスをスキャットでフルコーラス歌いまくります。

そして、3rdコーラス前半のピアノ・ソロを挟んで後半を歌ってエンディングは最後の”things”で断ち切るように終わります。

名演です。