la-musicaの美の採掘坑

自然、美術、音楽、訪れた場所などについて、「スゴイ!」「きれいだな...」「いいね」と感じたものごとを書き留めています。皆さんの心に留まる記事がひとつでもあればうれしいです。

生物多様性センター~標本収蔵庫ツアー (センス・オブ・ワンダー 34)

生物多様性センターでの「生物多様性まつり2015」は、8月2日(日)朝9時からのスタートでした。

我々は9時30分からの標本収蔵庫ツアーの初回に参加したかったので、8時半をめがけてセンターに向かいました。

センターのスタッフの人達がオープニングの準備をしているのを見ながら、8時40分頃からセンターの入り口で開館を待ちます。

さすがにその日は開館時間までに入場を待つ人達の列ができていました。

開館と同時に9時半からの初回標本収蔵庫ツアーと11時半からの葉脈標本の工作体験に申し込みました。

9時半までは企画展示「日本の北と南、比べてみました!」で、説明員さんから、自分が拾ってきたというニホンジカの角の話について聞きました。

オスの鹿の角は毎年生えかわり、最初は枝角のない一本角、そして一叉、二叉と増え、三叉四尖(分岐が三つに先端が四つ)になってからは大きさ以外は変わりません。

まれに五尖目が出るものがあるとのこと、展示されていた標本の鹿の角を見ると五尖目が出ていました。

標本収蔵庫ツアーは定員20名の60分のツアーで、この日4回実施されました。

標本収蔵庫には約6万5千点の標本が収蔵されています。

交通事故等で死亡した動物を引き取ったり、収集者から寄贈を受けたり、生きた個体を捕獲・採集しない方法を優先しているとのこと。

又、害虫対策は、薬品類をなるべく使わず、人や環境に配慮し影響の少ない方法を組み合わせて、予防対策中心で実行しているそうです。

例えば、標本収蔵庫への入り口のドアの前に粘着力のあるシールを貼った板を置いて、標本に害を及ぼす虫が入ってきにくい構造にしています。

そして、入り口部分に緩衝地帯の空間を作り、手前のドアを完全に閉じてから奥のドアを開ける施策を採っています。

標本収蔵庫

収蔵施設の中には緩衝区域として作業室と燻蒸室があります。

外部に出した標本を含め、標本を収蔵庫に入れる/戻す前に、二酸化炭素を充満させた燻蒸室で燻蒸処理を行います。

乾燥系標本収蔵庫には標本棚が並び、棚の中に標本箱が並べられています。

箱の中の各標本のラベルにはバーコードが記載されていて、昆虫標本等は収蔵箱から取り出さずにバーコードを読み取ることができるため、標本閲覧作業による標本の破損を防ぐことができます。

蝶の標本箱ではそれぞれの蝶の表面と裏面が並べられています。

チョウ標本 バーコード

この部屋では、日本の各地の生態系に悪影響を与えている外来種について知ってもらうための、外来種のアクリル標本も色々見せてもらいました。

標本閲覧室では植物の標本を見せてもらいました。表と裏の両面が観察できるようにレイアウトされています。

植物標本

最後に見せてもらったのが特別収蔵庫。

防火対策が施された収蔵庫で、"お宝"がたくさん収蔵されています。

部屋に入るとまずジュゴン骨格標本が目に入ってきます。

ジュゴン環境省の評価では、"ごく近い将来における絶滅の危険性が極めて高い種"、CR(絶滅危惧IA類)とされています。

採集場所は熊本県

ジュゴン骨格標本

同じ並びにはアオウミガメの本剥製。"絶滅の危険が増大している種"、VU(絶滅危惧II種)です。

アオウミガメ標本

EW(野生絶滅)、"飼育・栽培下でのみ存在している種"であるトキの本剥製がありました。

純国産のトキは2003年に最後の一羽が死んで絶滅してしまいました。

生物多様性センターのデータベースによれば、この剥製のトキは1981年に新潟県両津市で採集されたものだそうです。

国産トキ標本

1999年の中国からの個体提供、繁殖成功後のトキの剥製もありました。

鳥の剥製で、羽を畳んだり首を折り曲げたりして棒の支えがついた、"仮剥製"というものも見せられました。

長さや大きさを測りやすいようにしているそうです。棚にはシマフクロウとタンチョウが収められていました。

タンチョウヅル標本

対馬に生息するツシマヤマネコの本剥製。ツシマヤマネコジュゴンと同じくCR(絶滅危惧IA類)です。

ミシマヤマネコ標本

こちらは奄美諸島固有の原始的なウサギ、アマミノクロウサギです。

EN(絶滅危惧IB種)、"IA種ほどではないが、近い将来における絶滅の危険性が高い種"です。

アマミノクロウサギ標本

そして、CR(絶滅危惧IA類)のシマフクロウ。北海道根室市で採集されたものだそうです。

シマフクロウ標本

子供たちも楽しめるようにところどころでクイズを出してくれました。

その一つに、剥製を作る際にその動物の骨が活用されているのは、頭、腰、手足のどの部分か?というものがありました。

答えは"頭"で、頭の骨が無いと顔の表情が自然に見えないため、ということでした。

手足などの部分は骨の代わりに針金を活用しているとのこと。

普段は見られない標本・剥製を見せてもらい、色々と興味深い話を聞かせてもらった、中身の濃い60分でした。

標本収蔵庫ツアーの後は、"ヤマネコ先生の特別講座"で話を聞きました。

7月中旬から開催されている"イリオモテヤマネコ発見50執念特別展"に絡めて、その日、環境省西表野生生物保護センターのアクティブレンジャーの方が来て話を聞かせてくれました。

11時半からは葉脈標本の工作体験に参加し、その後も押し花コースターづくり、間伐材うちわづくりをしているうちに午後になっていました。

一旦外に出て、センター周辺の自然散策路に持参したキャンプ用のイスを持ち出して簡単な昼食。

その後は、自然散策路を少し歩いた先にある山梨県富士山科学研究所に行き、同時開催の"富士山研まつり2015"を覗いてみました。

富士山研の方のプログラムを見ているうちに時刻は午後4時近くになっていて、帰途に就くことにしました。

朝から夕方まで、色々なものを見、色々なことを聞かせてもらった一日でした。