ブラームス~ヴァイオリン協奏曲 (歌の採掘坑 18)
3月8日(日)、横浜みなとみらいホールでの、エサ=ペッカ・サロネン指揮フィルハーモニア管弦楽団とヒラリー・ハーンによるコンサートを聴いてきました。
演目は、シベリウスの交響詩「フィンランディア」、ブラームスのヴァイオリン協奏曲、そしてシベリウスの交響曲第2番。
ヒラリー・ハーンによるブラームスのヴァイオリン協奏曲を聴くのが第一の目的でした。
2002年にドイツで初めて演奏を聴いて以来ヒラリー・ハーンのファンです。
彼女の演奏する無伴奏パルティータを聴いて、本格的にバッハに目覚めました。
彼女が演奏するバッハのヴァイオリン・コンチェルトはNo.1の愛聴盤で、晴れた日に木漏れ日の中をドライブしながら聴くと清々しく幸せな気分になります。
彼女が2001年にリリースしたブラームスのヴァイオリン協奏曲も愛聴盤です。
ブラームスはバッハとともに大好きな作曲家です。
バッハの音楽は心を落ち着かせて静寂をもたらしてくれますが、ブラームスの音楽は琴線に触れ心を揺さぶります。
ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品77は、ブラームスが残した4曲の協奏曲のうち、ヴァイオリンのみを独奏楽器とする唯一の協奏曲で、1878年、作曲者が45歳の時に書かれました。
三楽章からなる40分強の長さの曲です。
独奏ヴァイオリンが奏でる魅力的な旋律の数々と、独奏ヴァイオリンとオーケストラが絡み合いながら生み出すシンフォニックな響きの両方を満喫できるコンチェルトです。
第一楽章”アレグロ・ノン・トロッポ”はソナタ形式で書かれていて、全曲の半分以上の長さを占めます。
牧歌的な第1主題で提示部が始まり、オーケストラが次第に緊張感を高めていったところで、独奏ヴァイオリンが情熱的な旋律で登場します。
第2主題は管楽器により柔らかく始まり、やがて独奏ヴァイオリンがたゆたうように美しく心地よい旋律を奏でます。
ブラームスの作品にはメランコリックで美しい旋律がふんだんに織り込まれていますが、その中でもとびきり美しい旋律があり、その部分に至るとカタルシスのようなものを感じます。
展開部、再現部と続いた後、独奏ヴァイオリンによるカデンツァ(即興的ソロ)が弾かれ、オーケストラも入って結尾となりはぎれの良い和音で第一楽章が終わります。
続く第二楽章"アダージョ"は、開始早々暫くの間、オーボエが田園的な美しい旋律を演奏し、その後独奏ヴァイオリンがメロディを引き継いで柔らかく優美に奏でます。
オーケストラが盛り上げた後、曲調は一転して憂愁を帯びた抒情的なものに変わり、「ヴァイオリンによるコロラトゥーラのアリア」と評される、むせび泣くような旋律が続きます。
再び、初めの主題に戻り平穏の中に第二楽章が終わります。心を震わせる至福のアダージョです。
第三楽章"アレグロ・ジョコーソ、マ・ノン・ヴィヴァーチェ"は、冒頭から独奏ヴァイオリンがハンガリー風の主題を活気よく奏でます。
オーケストラが絡んでリズミカルな調子で盛り上げていき、コーダでトルコ行進曲風のリズムに変わって演奏された後、最後は力強く終わります。
CDのライナーノーツによると、ヒラリー・ハーンがブラームスのヴァイオリン協奏曲を初めて聴いたのは彼女が7歳の時だそうです。
この曲について彼女が学び始めたのがその6年後とのことなので13歳の時。そしてCDをリリースしたのが2001年、21~22歳の頃です。
3月8日のコンサートでのヒラリー・ハーンは表情豊かな演奏で素晴らしかった。 時にエネルギッシュに、時に切々と、時に軽やかに…
白のドレスに身を包んだ彼女の立ち姿は美しく、演奏する姿も優雅でした。
彼女の冴えた音に聴き入り、身を委ねているうちに終わってしまいました。
アンコールは、バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番から一曲。
ドイツで初めて彼女の演奏を聴いた時の懐かしい曲。
さて、その日のエサ=ペッカ・サロネン指揮フィルハーモニア管弦楽団によるシベリウスの「フィンランディア」と交響曲第2番、迫力のある熱い演奏でした。
金管楽器とティンパニが力強くがんがん響いて凄かったのですが、弦楽の音の層の厚さもスゴイと感じました。
そして、アンコールの「悲しきワルツ」。
緩急、強弱、自由自在の演奏で、ぐいぐい引き込まれ、最後のピアニシモもクリアに耳に届いてきて感動!
終わった後も興奮冷めやらぬ演奏会でした。