la-musicaの美の採掘坑

自然、美術、音楽、訪れた場所などについて、「スゴイ!」「きれいだな...」「いいね」と感じたものごとを書き留めています。皆さんの心に留まる記事がひとつでもあればうれしいです。

Lush Life (歌の採掘坑14)

デューク・エリントン楽団の作編曲者であったビリー・ストレイホーンが書いた『Lush Life』は、「John Coltrane and Johnny Hartman」のジョニー・ハートマンの歌で初めて聴きました。

難解な曲というのが第一印象でしたが、何度も聴き込んで歌詞の内容も理解するうちに、My Favorite Songsの一曲となりました。

"lush"には俗語で"大酒のみ、飲んだくれ"という意味があり、"Lush Life"は"飲んだくれの人生"という意味です。

<< Lush Life >>

Words and Music By Billy Strayhorn

(Verse)

I used to visit all the very gay places

Those come what may places

Where one relaxes on the axis of the wheel of life

To get the feel of life from jazz and cocktails

The girls I knew had sad and sullen gray faces

With distingue traces that used to be there

You could see where they'd been washed away

By too many through the day twelve o'clock tales

Then you came along with your siren song to tempt me to madness

I thought for a while that your poignant smile was tinged

With the sadness of a great love for me

Ah, yes, I was wrong, again I was wrong

(Chorus)

Life is lonely again

And only last year ev'rything seemed so sure

Now life is awful again

A thoughtful of heart could only be a bore

A week in Paris will ease the bite of it

All I care is to smile in spite of it

I'll forget you, I will

While yet you are still burning inside my brain

Romance is mush stifling those who strive

I'll live a lush Life in some small dive

And there I'll be, while I rot

With the rest of those whose lives are lonely too

"娼婦のいる飲み屋で、ジャズと酒を通じて生きている実感を確認する私。

そこには昼間からの"仕事"のせいで落ちてしまった濃い化粧の跡が残る疲れた女たち。

そこに現れた君は私が気が狂わんばかりに誘惑した。

君の辛そうな微笑みは私への叶わぬ恋の悲しさによるものと思い込んでしまったが、私は間違っていた。

またしても間違っていた..."

ここまでが導入部のヴァ―ス。そしてコーラスに繋がります。

"毎日の生活はまた孤独ですさんだものに戻った。つい去年までは何もかもが確かなものに思えたのに。

パリで一週間でも過ごせば傷は癒えるだろう。だから笑顔を作るように心がけるのだ。

まだ君が私の脳裏に焼き付いて燃え上がっている最中に君のことを忘れてやるのさ。

私はどこかの小さな酒場で飲んだくれの人生を送るのだ。

私はそこで、同じように孤独な人生を送っている飲んだくれたちと朽ちていくのだ。"

ユニークなコード進行で淡々と流れていくような静かなバラードですが、歌詞は重いです。

1938年にまず曲が作られ、1949年になって歌詞がつけられたそうです。

ヴァ―スから一つの物語となっている曲なので、ヴァ―スを省略してコーラスから歌うのはあり得ないです。

自分にとっては「John Coltrane and Johnny Hartman」でのジョニー・ハートマンの歌、ジョン・コルトレーンのサックス、マッコイ・タイナーのピアノによる演奏がベストです。

John Coltrane and Johnny Hartman

マッコイ・タイナーのサポートで、ジョニー・ハートマンとジョン・コルトレーンが艶やかな歌と演奏を聴かせてくれます。

もう一つのお気に入りは、アルバム「My Romance」に収録されているケビン・マホガニーの演奏です。

Kevin Mahogany My Romance

ケビン・マホガニーは、ボブ・ジェームズのピアノの伴奏だけで渋く甘く歌い上げます。

自分がバリトンなので、どうしてもジョニー・ハートマンとケビン・マホガニーの声&歌に魅かれてしまうようです。

作詞作曲のストレイホーンは長年デューク・エリントンの片腕・書生として、いわゆる影武者として活躍しました。

とても繊細な人物であったようで、この曲を聴くとそれが良く感じられます。