Beautiful Maria Of My Soul~Bella Maria De Mi Alma (歌の採掘坑 10)
「マンボ・キングス/わが心のマリア」という、1950年代のマンボ流行時の音楽界を舞台に、ラテン・ミュージシャンの兄弟の青春を描いた映画がありました。
1992年公開なのでもう随分前の映画ですが、アーマンド・アサンテがエネルギッシュな兄を、アントニオ・バンデラスが内省的な弟を演じ、全編にマンボが流れてラテンの雰囲気いっぱいの映画でした。
バンデラスのハリウッド・デビュー作です。
あらすじは、弟の恋人を巡るトラブルでキューバからアメリカNYに逃れてきた兄弟が、NYのクラブ・シーンに喰い込みスターへの道を歩み始めますが、次第に二人の間に亀裂が入り、その中で悲劇が起こり・・・というものです。
セクシーで社交的な兄セサールはアメリカンドリームを追いかけ成功を掴み取ろうとしますが、根っこには弟に対する強い愛情(全ては弟のため)があります。
一方、芸術家肌で繊細な弟ネスターは、昔の恋人マリアの呪縛から逃れてNYで出会ったドロレスと堅実な生活を送っていこうとします。
彼の作曲した『わが心のマリア』のヒットで彼らのバンド”マンボ・キングス”はスターダムにのし上がりますが、ネスターは、恋人との別れの真相のショックと、兄の束縛から逃れたいという気持ちから軽率な行動をとってしまい、そのストレスの中で事故を起こし命を落としてしまいます。
ドロレスはネスターと愛し合い結婚するものの、ネスターの昔の恋人マリアへの忘れえぬ思いに苦しみ、一方でセサールへの秘めた思いに悩みます。
エンディングは兄セサールが歌う『わが心のマリア』です。
自分のクラブを持ちたいという弟の夢をセサールが実現させたオープンの日、去ろうとするセサールに対してドロレスが自分のために「わが心のマリア」を歌ってほしいと頼むのです。
『わが心のマリア』は映画の中で何度も演奏され歌われます。
ほとんどは歌手・兄セサール役のアーマンド・アサンテが英語で歌っているのですが、弟ネスター役のアントニオ・バンデラスが歌うスペイン語版も少し流れます。
映画のサントラには、Mambo All-Starsをバックにアントニオ・バンデラスが歌うスペイン語版と、アメリカのバンドLos Lobosが演奏し歌う英語版の両方が収められていますが、バンデラスのスペイン語版の方が断然良いです。
バンデラスがいい声をしていて歌もうまいということもありますが、やはり、この曲の雰囲気にはスペイン語の粘っこさや"ため"が不可欠です。
歌詞もスペイン語の方が熱く、ストレートです。
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Si deseo sonreir / 微笑みたい時は
Pienso solamente en ti / おまえのことだけを思い浮かべる
En la magia de tu amor / おまえの愛の魔法
En tu piel en tu sabor / その肌 そのあじわい
En la isla del dolor / 苦悩の島で
Recuerdo tu calor / おまえのぬくもりを思い出す
Desearia morir / 死ぬのなら
Cerca de ti / おまえの傍らで
Un ardiente corazon / 燃え上がる心が
Colorea mi pasion / 渡しの情熱を彩る
Deseando compartir / 分かち合いたい
El sentir de este vivir / この生命の感触を
En las olas de este mar / この海の波間に
Sueno en la eternidad / 永遠を夢見る
Con cada luna vendras / おまえは月と共に来て
Con la merea te iras / 引き潮と共に立ち去る
En un caracol / 貝殻の中に
Pienso oir tu voz / お前の声を聴いたように思う
La bella Maria de mi amor / 我が心の美しきマリアよ
Aunque estemos separados / たとえ離れていても
En un sueno angelicar / 清らかな夢の中で
Si llego de nuevo amar / 再び愛するならば
No hay razon, proque cambiar / 変わるべき理由はない
Temo yo permanecer / 私は怖い
Sin ti en la eternidad / 永遠におまえと離れてしまうことが
Lejos nos pueden separar / 距離が私たちを分かつことができるかもしれない
Jamas pudiera olvidar / だが 忘れるはずはない
Tu risa celestial / おまえの天の微笑み
Tus besos, tu calor / そのくちづけ そのぬくもりを
La bella Maria de mi amor / 我が心の美しきマリアよ
Si no te vuelva a ver / たとえもう二度と会うことができずとも
No dejaras de ser / おまえは永遠に私の中に生き続ける
La bella Maria de mi amor / 我が心の美しきマリアよ
作曲はロバート・クラフト、作詞(英語版のみ?)は映画の監督のアーネ・グリムシャーですが、スペイン語の歌詞の作詞家はよくわかりません。
英語版は、サントラのLos Lobosのヴァージョン以外に、ジョン・ピザレリが1993年リリースの「New Standards」で歌っています。
ピザレリ自身は好きな歌手なのですが、彼の『Beautiful Maria Of My Soul』は軽いスロー・バラードのアレンジで仕上げられていて、映画の『Bella Maria De Mi Alma』とは全然別の雰囲気の曲になっています。
自分にとってこの曲は、映画のイメージと密接に結びついているので、やはりパッションのあるバンデラスのスペイン語の歌がベスト・ヴァージョン/お手本です。