la-musicaの美の採掘坑

自然、美術、音楽、訪れた場所などについて、「スゴイ!」「きれいだな...」「いいね」と感じたものごとを書き留めています。皆さんの心に留まる記事がひとつでもあればうれしいです。

Violets For Your Furs (歌の採掘坑 8)

クリスマス・ソングには「The Christmas Song」、「Have Yourself a Merry Little Christmas」など好きな曲がありますが、それでも12月の曲として最初に思い浮かぶのは、12月のマンハッタンを舞台にした『Violets For Your Furs』です。

トム・アデア作詞、マット・デニス作曲の1941年の作品です。

<< Violets For Your Furs >>

Words by Tom Adair

Music by Matt Dennis

(Verse)

It was winter in Manhattan

Falling snowflakes filled the air

The streets were covered with a film of ice

But a little simple magic

That I'd heard about somewhere

Changed the weather all around

Just within a trice

(Chorus)

I bought you violets for your furs

And it was spring for a while, remember?

I bought you violets for your furs

And there was April in that December

The snow drifted down on the flowers

And melted where it lay

The snow looked like dew on the blossoms

As on a summer days

I bought you violets for your furs

And there was blue in the wintry sky

You pinned the violets to your furs

And gave a lift to the crowds passing by

You smiled at me so sweetly

Since then one thought occurs

That we fell in love completely

The day that I bought you violets for your furs

導入のヴァ―スは、雪の舞い散る冬のマンハッタンの情景で始まり、その上で、どこかで聞いたちょっとした魔法が一瞬にして天気を変えたことが語られます。

そしてコーラスは、"僕は君の毛皮のコートにすみれの花を買ったんだ"と始まり、その"魔法"がしばらく春をもたらし青空まで見せてくれたと続きます。

更に"君が毛皮にすみれを留めると道行く人達も明るくなった様子"と続き、"君が僕にやさしく微笑みかけた瞬間、僕は思ったんだ。僕たちは完璧に恋に落ちたんだと。僕が君の毛皮にすみれを贈ったあの日に"と終わります。

途中、"花の上に舞い落ちた雪がその場で溶け、あたかも夏の日の花の露のよう"という描写もあり、全体を通して非常に詞的で、歌詞を読んだ際、一篇の詩としてよくできていると思いました。

歌っていてもその情景が色とともに目の前に浮かびます。

初めてこの曲を聴いたのはフランク・シナトラの「Songs For Young Lovers & Swing Easy」でした。

Frank Sinatra Songs for Young Lovers

1953年&1954年録音のシナトラのキャピトルでの初期2作品をカップリングした、16曲全てが素晴らしい名盤です。

『Violets For Your Furs』は、「My Funny Valentine」, 「Like Someone In Love」などとともに、バラード中心の「Songs For Young Lovers」の方に収められていたものです。

スインギーな「Swing Easy」の方にも「Just One Of Those Things」や「All Of Me」など、ごきげんな曲が入っています。

シナトラは『Violets For Your Furs』を細やかな表現で丁寧に歌い上げています。

ネルソン・リドルのアレンジ/バックも素晴らしく、この曲のスタンダードといえる名唱だと思います。

一方、作曲者のマット・デニスによるピアノ弾き語りの自作自演ヴァージョンも、シナトラ版に負けず劣らず気に入っています。

以前、「Angel Eyes」について書いた時に紹介した「Matt Dennis Plays And Sings」です。

Matt Dennis Plays and Sings

マット・デニスのピアノと、ベース、ドラムのトリオによるハリウッドのクラブでのライブ録音です。

とにかく洒落ていて、"粋"という表現がふさわしい名演です。

図らずも「Angel Eyes」の時と同じように、フランク・シナトラとマット・デニスになりました。

もちろん、ヴォーカルに限らなければ、この曲についてはジョン・コルトレーンの名演を挙げないわけにはいかないでしょう。

1957年の初リーダー・アルバム「Coltrane」に収められた「Violets For Your Furs」のストレートな演奏。

インストでの決定盤です。

Coltrane.jpg