When October Goes (歌の採掘坑 1)
そろそろ音楽についても書いてみようという気になりました。
ジャズ、クラシック、映画音楽等々、ジャンルを問わず好きな音楽は多くあります。
ただ、一時期ジャズ・ボーカルにのめり込んでスタンダードをたくさん聞いて歌ってきたので、特にジャズ・スタンダード曲にはたくさんの好きな曲があります。
そして今取り上げるのなら、曲は『When October Goes』です。
ジャズ・ボーカルに熱中しはじめた頃、CDショップで手にした「Kevin Mahogany」というアルバム。
バリトン・ヴォイスの実力派男性ジャズヴォーカリスト、ケヴィン・マホガニーのワーナーブラザース移籍第1弾で、本人の名前を冠したアルバムです。
このアルバムに収められた『When October Goes』というバラードに惹きつけられました。
なぜか聞き覚えがあるような気がして作曲者を見るとバリー・マニロウとあります。
調べるうちに学生の頃に購入した「2:00 A.M. Paradise Cafè」というアルバムが記憶に蘇ってきました。
バリー・マニロウは「コパカバーナ」という大ヒット曲を持つアメリカの歌手・作曲家・プロデューサーです。
『When October Goes』は、『Moon River』や『The Days Of Wine And Roses』などを作詞したジョニー・マーサーの詞にバリー・マニロウがメロディをつけて1984年にリリースした曲です。
≪When October Goes≫
Words by Johnny Mercer
Music by Barry Manilow
And when October goes
the snow begins to fly
Above the smokey roofs
I watch the planes go by
The children running home
beneath a twilight sky
Oh, for the fun of them
when I was one of them
And when October goes
the same old dream appears
And you are in my arms
to share the happy years
I turn my head away
to hide the helpless tears
Oh, how I hate to see October go
I should be over it now I know
It doesn't matter much how old I grow
I hate to see October go
この詞・歌を口ずさむと目の前に粉雪が舞い始めた晩秋の情景が浮かび上がります。
過ぎ去った愛の日々を振り返り、老いゆく自分を見つめさせる、憂愁の季節。
メロディーも美しく心に沁みる曲です。
自分でも歌ってみたくて、ケヴィン・マホガニーとバリー・マニロウの歌を何度も聴いて旋律を採譜し、コードもまず自分なりに付けたうえで知り合いのピアニストに相談しながら手直しし、自分用の譜面を完成させました。
それ以来、自分にとっては大事なレパートリーの一曲です。
この詞はジョニー・マーサーの未完成の遺作です。
マーサーは、自分の娘の名前と同じ"Mandy"という曲で最初のヒットを飛ばしたこともあって、マニロウの事を気に入るようになったそうです。
こうした事情もあって、マーサーの未亡人が未完成の詞をマニロウに託し、曲として完成させてもらったとのことです。
以前、オランダのデン・ハーグで開催されたノース・シー・ジャズ・フェスティバルに行った際、ダイアン・シュアのライブで彼女が歌う『When October Goes』を聴きました。
彼女はその頃友人を亡くし、そのことがきっかけでこの曲を歌おうと思ったと話していました。
余計なフェイクは加えず、ストレートに情感たっぷりに聴かせてくれました。
10月が過ぎゆくこの時期に聴きなおしたい曲です。