la-musicaの美の採掘坑

自然、美術、音楽、訪れた場所などについて、「スゴイ!」「きれいだな...」「いいね」と感じたものごとを書き留めています。皆さんの心に留まる記事がひとつでもあればうれしいです。

日本水準原点 (センス・オブ・ワンダー15)

5月28日、日本水準原点の一般公開に行ってきました。

当初は一週間前の5月21日に予定されていましたが、雨天のために順延になったものです。

4月の初めに筑波にある「地図と測量の科学館」に行った際に、その展示で”日本水準原点”のことを知り、一般公開時には見に行ってみたいと思っていたのでした。

千代田区永田町、国会議事堂の近くにある憲政記念館の構内に日本水準原点標庫という石造りの建物があります。

この中に、国内の高さの基準となる日本水準原点が設置されています。

以下は配布された国土交通省国土地理院関東地方測量部による説明シートからの引用です。

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土地の高さ(標高)は平均海面を0mとしてそこからの高さで表されますが、実用的には地上のどこかに標高の基準となる点を表示しておく必要があります。

このため、1891年(明治24年)に陸地測量部ではこの地に標高の基準となる点(水準原点)を造りました。

当時、隅田川河口の霊岸島で行われていた潮位観測(6年間の平均値)と、霊岸島からこの地までの高さの観測(水準測量)結果を用いて、建物内部の水晶板目盛りの0表示の高さを、東京湾平均海面上24.500mとしました。

その後、1923年(大正12年)の関東大震災により地殻変動生じたため、地震による影響のなかった地域からの水準測量データや油壺の験潮データを用い、原点が86mm沈下したことを確認し、原点数値を1928年(昭和3年)に24.4140mと改定しました。

さらに、2011年(平成23年)3月に発生した東北地方太平洋沖地震による地殻変動で24mm沈下したため、2011年(平成23年)10月に原点数値を24.3900mに改定しました。

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日本水準原点標庫の中に設置されている日本水準原点は年に一回公開されます。

この日は、標庫の中央にある扉が開かれて、中にある水準原点とその水晶板が見えるようになっていました。

日本水準原点標庫

下の写真で、水晶板に赤で刻まれている目盛りの"0"の水平線が日本の高さの基準で、2011年10月以降は標高24.39mのポイントです。

水晶板をよく見ると数字が上下逆に刻まれていますが、これは水準儀でのぞくと逆さまに見えるため、あらかじめ逆さまに表記したとの説明でした。

日本水準原点

水準測量とは、下の写真にイメージ図がある通り、前後に設置した二本の標尺の目盛りを中央に置いた水準儀で読み取り、その差を求め、これを順次繰り返すことによって離れた2点間の高低差を求める測量です。

水準測量

国の水準点は全国の主な国道・県道に沿って約2kmごとに設置されているとのこと。

ちなみに日本水準原点の周りにも5カ所(甲/乙/丙/丁/戊)に一等水準点が設置されています。

地上にある"丁"以外の4カ所は地面の下にあり普段は鉄の蓋で覆われています。

一等水準点丙

これまでこの水準測量で全国的な高低測量が進められてきたものの、近年の衛星測位システム(GNSS)の実現、スマートフォン等による測位技術の国民への浸透など、技術・社会面で大きな変化が生じていることを背景に、衛星測位技術を最大限に活用してスマートでコンパクトな基準点体系を目指す、という方向に進みつつあるようです。

日本水準原点の歴史についての説明もあり、はじめて知ることも多くあってとても有意義でした。